13.イヌサフラン(犬泪夫藍・コルチカム)—痛風の特効薬コルヒチン—

ギョウジャニンニク、ジャガイモやタマネギと間違えて食べて、中毒を起こす事故が多く発生しています。決して食べないでください。

副作用・毒性がつよい

友人から、お庭に咲くイヌサフランの花の写真が送られてきました。地面からいきなり花筒が出て、紅紫色の花を咲かせています。葉は春に出て夏には枯れてしまい、秋になると花だけが地面から咲きます。葉がなくて花だけ露出しているから「裸の貴婦人」と呼ばれるそうですが、その姿はヨーロッパの舞踏会の貴婦人たちのようです。

アヤメ科の「サフラン」と同じ単子葉植物で、よく似ているユリ科の多年生植物ですが、サフランほどには高貴高価なクスリでもないからイヌがついたサフラン。漢字表記では犬泪夫藍。イヌ○○はこのように、姿や効能もよく似ているが、安く入手できるとか、ほんものより少し劣るなどといった場合によく使われる名称です。鑑賞用に栽培さいれている美しい貴婦人にイヌをつけるのは失礼だからコルチカムと呼びましょう。

痛風の特効薬として現在でも使われる「コルヒチン」

北アフリカ、ヨーロッパ南部の地中海地方を原産とするユリ科の球根植物。薬用部分は種子=コルヒコム子、球根(正確には地下球茎)=~根で、古代エジプト時代には種々の痛みに使われていたといいますが、副作用・毒性がつよいため、その後はあまり利用されませんでした。
クスリとして有名になったのは18世紀になって、フランスでこの球根の葡萄酒漬けが、痛風のクスリとして発売されて以降といわれます。梅酒と同じように、アルコールで成分を抽出したもので、一般にアルコール漬けした状態を「○○チンキ」と呼びます。

この主成分がコルヒチンと呼ばれるアルカロイドで、痛風の特効薬として現在でも使われる「コルヒチン」です。チンキの状態では、冒頭のサフランもコルチカムも、痛風以外の関節痛にも効いたり別の薬効もありますが、純粋に抽出したコルヒチンは痛風の痛みにだけ特異的に効きます。これが生薬と化学薬品の違いです。

このコルヒチンの水溶液にスイカの種子をつけておくと、細胞分裂が抑制され、染色体の分裂だけが進むので、染色体の数が多い種子ができる。これをもとにして「種なしスイカ」ができるのです。私が欲しがったのものだから、友人からこの球根がたくさん送られてきました。来秋にはアニマルファームの畑でも、貴婦人たちの舞踏会が開かれる予定です。