苦み成分はメロトキシン
「ナスの蔕:茄蔕:かてい」を紹介しました。同じ読み「かてい」ですが、今回はウリのヘタ「瓜蔕」。ともに台所では捨てられる生ゴミですが、この部分をクスリとして使っているところが面白い。蔕を使う有名な漢方生薬には、他にも柿のヘタ(柿蔕)があります。今回の瓜蔕はこの柿蔕に薬効が似ていて「催吐剤」といいます。
現代にも通じる医療の智慧ですが「わるいもの」が身体の中に入ったとき、それがまだ胃袋くらいにあるならば、吐き出させてしまえ、というクスリが催吐剤です。現代の胃洗浄に相当します。もし下腹=腸まで入ってしまった、と判断したらこんどは下剤で下して出してしまいます。このウリのヘタにはその両方の薬効があります。因みに、飲み過ぎたら吐く、風邪をひいてウイルスが腸に入ったら下痢をする。これは「自然治癒力というクスリ」が生理的にちゃんと始末してくれているのです。
ウリ科のマクワウリは、アフリカ原産で古く中国に伝わり日本にも弥生時代には伝わっていたといわれます。中国から渡来したから「唐うり」、岐阜県の真桑村の栽培が有名で、私の子供のころは「真桑ウリ」と呼ばれていました。「真っ赤ウリ」と聞こえるので意味がわからず、赤くないのに不思議だなーと思っていたものです。
その次に、プリンスメロンと名前がかわり、だんだん甘味がつよくなってきました。そのころ出始めたネットメロン(マスクメロン)は憧れの高嶺の花でした。このマスクとは麝香(じゃこう)のことで、特別に香りのよいメロンという意味です。
私は20代に北海道の病院に勤務していたことがありますが、ちょうどその時に夕張メロンが開発され、以降ネットメロンを手軽に味わえるようになりました。
さてマクワウリの未熟果は苦く、その苦み成分:メロトキシンがとくに多いヘタは先述のように催吐作用や瀉下作用があります。単独で一物瓜蒂湯、納豆や小豆と合わせた瓜蒂散などがあります。乾燥した納豆と小豆の粉末、それにこの瓜蔕、なんだか想像しただけで吐きそうなクスリです。