60.小麦・しょうばく・浮小麦-盗汗(ねあせ)などを止める補陰作用-

麦メシ、麦トロも美味

御存知のように小麦には米よりも多くの蛋白質(グルテン)が含まれていて、多く含まれてるのが硬質小麦。パンやスパゲッティのおいしさはこのグルテンに負うところが多い。強力粉ですね。蛋白質が少ないのは軟質小麦。薄力粉でケーキやお菓子に用います。(米にも麦にも硬軟二種類あるんだなー。) これらの製粉のときにとり除かれる皮や胚は「フスマ」といわれ飼料にされたり自然食に応用されたり、米でいえばヌカに相当します。

ついでに大麦は、パンにはならず、製粉しなくてもそのままゴハンと同じように粒食できます。
麦メシ、麦トロなどといいますが、現在ではほとんどが家畜の飼料にまわされます。粒が六列につく六条大麦と二列につく二条大麦があり、二条の方はウィスキーやビール用。コムギ、オオムギより少し野生種に近いのがライ麦。黒パンやウィスキー、ウォッカの原料に。

四時の気をみえて、五穀の貴

さて小麦はイネ科の越年草。古書に、「秋に播き、冬に長じ、春に秀で、夏に実る。四時(季)の気を具えて、五穀の貴となる。地暖かにして春播きて夏収むるものあり、気足らず。」と秋播きの越年型を推奨しています。現在の小麦の発祥地は黒海からカスピ海のオリエントで、紀元前50~60世紀といわれ、オオムギにかわって主食に座についたのは、紀元12世紀頃ヨーロッパ全土に小麦の栽培が拡がってからです。その後新大陸アメリカへ、またオーストラリアへ。東方へは中国での小麦栽培は紀元前20世紀には伝わっており、日本へは紀元4~5世紀といわれ、8世紀には水田の裏作としてかなり栽培されていたそうです。

薬用には種子のままか、小麦粉として用いる。水でとぐときに浮き上がる未熟なものを浮小麦(ふしょうばく)といって、焦げるまで炒って粉末にして重湯にして服用する。漢方薬には補陰といい、盗汗(ねあせ)などを止めます。子供の夜泣きなどには、このシリーズにすでに出ている甘草大棗とまぜて、甘麦大棗というおくすりがあります。三つともおいしい食品を三種まぜて精神安定剤になる不思議。湿布くすりとしては小麦粉を練って、どんな外傷や火傷に湿布してもよい。