滋養強壮の薬用酒にも
公園や生け垣でよく見かけます。公害につよいから、高速道路の分離帯などにもよく植えられるモクセイ科イボタノキ属の常緑小高木ネズミモチ。別名「タマツバキ」は葉の形から。
冬でも常緑で変化しないので貞女になぞらえ「女貞」といいます。関東南部から朝鮮半島南部、台湾など比較的暖かい海岸地方に自生しています。夏に特有の臭いがする白色の小さい花を円錐花序につけ、秋に紫黒色の楕円形、長さ1センチくらいの果実を結びます。
この実がネズミの糞にそっくりで、葉はモチノキに似ているのでネズミモチ。千年前の「和名抄」にもこの名がすでにあります。また材は緻密(ちみつ)で、道具の柄などに用いられます。
このネズミモチと似ていて、実や葉がやや大型の中国原産のものを「唐ネズミモチ」といいます。正確にはこちらを女貞、その種子が女貞子という漢方薬ですが、ネズミモチと区別なく漢方薬・民間薬として用いられます。戦時中には、虎杖根(スカンポ)の葉がタバコの代用品となったように、この女貞子がコーヒーの代用品になったといわれます。
晩秋に果実を水洗いして日干しにして様々な処方に配合されます。漢方では「肝腎要(かんじんかなめ)」の肝と腎を補う作用がつよいから、足腰の老化や白髪、視力低下などに人参や地黄などと倶に処方されて用いられます。
果実酒にはホワイトリカー1.8リットルに女貞子200グラム、グラニュー糖200グラム。半年後には滋養強壮の薬用酒になります。葉には消炎鎮痛作用があり、葉を炙ってから皮膚のできものや火傷に貼り付けたり、また浴剤にも用いられます。