59.ゴマ(胡麻・芝胡麻・脂麻・セサミ)—先天の元気を養う、強い抗酸化作用。—

抗酸化作用のため劣化しにくいゴマ油

ゴマ

最近の子どもたちには「開けゴマ!!」は死語でしょうか。「アリババと40人の盗賊」のなかのこの呪文は、ゴマに聖なる効力があると古くから人類が知っていたことの証拠です。幼児用番組の「セサミストリート」のセサミはゴマのこと。17世紀に新大陸に渡ったゴマで一財をなしたアンダーソン兄弟がつくった青少年教育機関の故事から、この「セサミストリート」が生まれました。

アフリカ原産のゴマは、古代から宗教儀式の薫香剤に使われていました。現在でも「護摩を焚く」といいますね。栽培も古くから行われ、紀元前後に西域から中国に伝わったといわれてますが、実際はもっと古くから中国へ伝わっていたようです。漢民族から見れば西域の野蛮な民族の呼称のひとつが胡(フン族)。そこからシルクロード経由で中国に伝わったから胡麻。胡椒、胡瓜、胡桃などみな同じ族の名を冠した名称です。種子を使う似た植物では大麻子が中国に以前からあったので、区別して胡麻と名前をつけたのでしょう。

ゴマ科ゴマは春播いて夏にきれいな薄紫色の花を咲かせ、秋になると2~3cmの長さの実をつけます。実ごとよく乾燥して、踏んだり叩いたりすれば中からバラバラと種子が出てきます。白ゴマ、黒ゴマ、黄金ゴマとありますが、主成分はいずれも油脂。植物の種子は発芽成長の為に栄養を貯えていますが、米や麦のように炭水化物(デンプン)で貯えているものを人類は主食に選び、ゴマや菜種のように脂肪で貯えている種子は副食として、また油を搾って塗りくすりとして、それから電灯以前には燈油として使っていました。ゴマ油は酸化(劣化)しにくく、何回かテンプラに使えますが、それは、セサミオイルの抗酸化作用のためといわれます。

黒ゴマは香りがよいのと、黒色は漢方の世界では、先天の元気を養うと尊ばれるので、漢方薬には黒胡麻が使われます。油脂成分ですから滑りやすい。眼を潤したり、便秘の為の下剤にもなります。もちろん、滋養強壮、若返り(白髪が黒くなったり)作用が中心です。 白ゴマは油脂成分がこの三者ではいちばん多いので、そのまま食べるのはもちろん、蒸してから圧搾してゴマ油をとります。
料理に使う他、軟膏の基剤として使いますが、皆さんもよく使う「紫雲膏」に使われるので有名です。