スパイスとして利用されている
肉豆蒄(ナツメッグ)の名前の由来となった草豆蒄のことをすこし書きました。今回の白豆蒄、小豆蒄、或いは漢方薬としてはこちらの方が有名な縮砂(砂仁)などはこの草豆蒄と同じような効能をもち、同じショウガ科に属する生薬ですが、最近ではスパイス売り場にある「カルダモン」といった方が通りがよい。
ショウガ科といえば、このシリーズで紹介済みの「生姜」や「ウコン(ターメリック)」が根茎を使うのに対して、今回のカルダモン類はみな種子が生薬(スパイス)になります。
カルダモンは、インド南部の原産で,紀元前より地中海貿易の主役となり、紀元一世紀にはインドからローマへ大量に輸出されていたといいます。その後イスラム圏にも広がり、十世紀以降になって、中国にも伝わり、他の南方系の薬草とともに漢方薬の仲間入りをしました。現在では南インド、スリランカ、マレーシア、グアテマラなどに広く栽培されています。
カルダモンの仲間は地下に肥厚して木質化した地下茎をもち、葉はショウガ科共通の大型の披針形で、長さ30~100cm、幅7.5~15cm。地下茎から長さ60~90cmの花茎を出し,円錐花序にショウガに似た白色の花をつけます。果実は長さ2cmほどの長楕円形で3稜があり、内部は3室に分かれて、黒褐色で不規則な稜角のある3mmほどの種子が14~17個はいっています。完熟前のまだ果皮が開いて種子が散ってしまわないうちに、果実を摘みとり、水洗いし,硫黄で漂白したのち日干ししてできあがり。
このカルダモンはショウノウに似たするどい芳香をもち、カレー粉の主要な原料として有名。ソースや肉製品のスパイスに欠かせません。粉にひいてパンや菓子、洋酒の香味づけにも用いられます。インドでは食後の口中清涼剤にこの種子を咬んだり、コーヒーに入れて香りを楽しむカルダモンコーヒーに。暑い地方の精力剤でもあります。
内服薬としては一口に言って芳香性の健胃剤。漢方では、縮砂がいちばん有名で、ショーガ科共通のシネオールなどの精油成分が、胃のはたらきを高め、消化不良や腹の膨満感を解消します。例えば、同じように南方インドからもたらされた木香と組んで、六君子湯の作用をつよめる香砂六君子湯に配合されます。しぼって得られるアロマオイルは、マッサージ、香りを吸って、婦人の生理痛などを治します。