19.ウナギ(鰻・鰻麗魚・まんれいぎょ)—五痔、瘡瘻、諸虫に効く—

ぬるぬるはムチンなどの糖タンパク

土用のウナギといいますが、土用とは90日づつある四季のそれぞれ最後の18日間のこと。古代中国の五行説の基本は木・火・土・金・水。季節は四つしかないので、春・夏・秋・冬の配当された、木・火・金・水はいいとして、土の処遇に困った。それでひねりだしたのが「土」用です。そこで90日の各四季から終りの18日を借りて、たとえば夏の土用なら立秋の前の18日間、というようにしたのです。このように土用は四季にありますから合計72日。18日ずつ引かれた他の四季も72日となって、めでたく一年360日を五行に五等分できたのでした。

ウナギ目ウナギ科 の硬骨魚。ウナギ目にはこのほか、アナゴ、ウツボ、ウミヘビ、ハモなどがお馴染み。関西のハモも祇園祭と結びつけられてこれも夏の味覚です。

ウナギの産卵場はながく明らかにされていませんでしたが、レプトセファラス(葉形幼生といわれる葉っぱの形をしたウナギの仔魚) の追跡調査から、沖縄の南方、台湾の東方の水域と推定されています。西洋でも大西洋のいったい何処でウナギが増殖しているのか長く不明で、かのアリストテレスはウナギの泥中自然発生を説いたそうです。

このようにその形態、発生の不可思議さから、古来、世界の各地で信仰の対象となってきました。ウナギ=龍=生殖器=山芋などの伝承が多くあります。
「体は円筒形で、胸びれはよく発達しているが、腹びれはなく、背びれ・尾びれ・しりびれは連続している。鰓蓋(さいがい)は発達せず、比較的小さな鰓孔(えらあな)を開く。体色は背面が黒く、腹面は白色で、ときにやや黄色みを帯びる。鱗(うろこ)は長楕円形で小さく、皮膚に埋没してモザイク状に並んでいる。」とありますが、確かに鰓(えら)は目立たない、鱗もあるようには見えませんね。そのぬるぬるの体表面は多量の粘液(ムチンなどの糖タンパク)を分泌しているから。

皮膚呼吸の能力も優れているので、雨が降った後など、水中から出て湿った地面を這ってかなりの距離を移動することがります。川と連絡のない池などにウナギが住みついていることがあるのはこうした移動をするからだそうです。
中国の古医書には『無鱗魚』のなかに「鰻驪魚」とあり、これがウナギに相当するといわれます。「五痔、瘡瘻、諸虫に効く。五味を以て羹に煮て食えば虚損、及び久病の労?を治す」とあります。