烏骨鶏は骨まで黒い鶏
酉年の「トリ」は鶏(ニワトリ)のことです。
ニワトリはキジ科ニワトリ属の鳥類で、家禽(かきん)の代表。祖先種は東南アジアに広く野生するセキショクヤケイ(赤色野鶏)といわれています。家畜化は紀元前3000年ころのインドが最初で、これが西へはイランを経て地中海沿岸諸国からヨーロッパへ、東は東南アジア・中国へと伝わりました。
インドでは鶏は夜明けを告げる鳥として尊重され、その勇猛な気質が賞賛されて神事のひとつとして闘鶏競技も行なわれ、これらの理由でニワトリの食用は厳禁されていました。ヨーロッパでも、犬とともに夜の悪魔を追い払うものとして崇拝されていたし、中国でも、暗黒の夜に跳梁する幽霊や妖怪を追い払い、光明の太陽を呼び出す神秘な霊鳥と考えられていました。
日本には中国を経由して紀元前300年ころに入ったと考えられ、古墳時代の埴輪にもニワトリがみられます。日本でも家畜化の初期には、時を告げる、闘鶏、愛玩が主目的であり食用の歴史はずっと新しいとされています。古くはその鳴声から「カケロ」といい、庭で放し飼いにしたので「庭鳥」ともいわれました。「古事記」には天照大神が天の岩屋戸に隠れ、世界が闇になったとき、八百万神が常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を鳴かせ、天照大神を呼び出す話が有名です。
烏骨鶏の腹に種々の生薬を詰めて蒸したものは高級薬膳料理
こうした太陽信仰との結びつきの他にも、鳴き声ばかりでなく、鶏の恐ろしい目つきは天狗が鶏に化けたからともいわれたり、後世には「風見鶏」になって災いを防ぎ,天気予報を告げるなど、なにかと鶏は信仰・神事と深い結びつきがあります。現実にも鶏の鳴声は時を知る手段とされ、丑(うし)の刻(午前2時)に鳴くのを一番鶏、寅(とら)の刻(午前4時)に鳴くのを二番鶏といっていました。
雄鶏の時を告げる声を観賞する長鳴鶏としては、東天紅(とうてんこう)という品種が有名。ひと声を20秒以上も引きのばす品種もあるそうです。美しい姿態を楽しむ品種としては尾曳(おひき)、チャボ(矮鶏)、比内鶏(ひないどり)、烏骨鶏などがあります。
烏骨鶏は皮膚、脚、肉から「骨まで黒い=烏色」からこの名があります。羽毛の色は白から黒までありますが、白毛の烏骨鶏が珍重されます。肉は不味いが上記のように愛玩用に世界中で飼育されており、日本には江戸時代に導入されました。漢方では滋養作用はもちろん、精熱作用もつよく、「烏鶏白鳳丸」などが有名です。内臓を取り除いた烏骨鶏の腹に種々の生薬を詰めて蒸したものは高級薬膳料理。