96.冬虫夏草(とうちゅうかそう・ふゆむしなつくさ)—中国陸上の馬軍団のスタミナ源となった薬膳料理—

昆虫に寄生するキノコの総称

plant warmの名のとおり、植物昆虫、或いは昆虫植物ともいうべき珍しい生薬です。一般には、昆虫やクモなどに寄生するキノコの総称です。普通のキノコは植物に寄生するのに対して、動物依存性のキノコといいます。冬に昆虫などの宿主に寄生した菌類が、その養分を吸収しながら宿主を枯死させ、夏に虫体の頭部から棒状のキノコを生じることから、冬は虫であったが夏には変じて草(キノコ=菌)となったもの=ふゆむし・なつくさ、というわけです。

昔は虫と菌類を同一体と考え、冬は虫の姿をしていて夏は変じて草となると信じられていたのです。昆虫(幼虫,成虫)やクモなどの体内に入った菌は、虫の体を栄養として菌糸をのばして生長し、やがて虫の体内を完全に占領します。このときに虫はすでに死んでいますが、虫の内部に充満した菌糸は密に固まって硬い菌核という組織になり、やがて温度・湿度などの条件が良ければ、この菌核組織からキノコが発生します。虫の体表はあまり崩れていないので、まだ生きている虫からキノコが生えているように見える。この姿が古人にはとても不思議だったのでしょう。

中国古来の陰陽論でいうと、冬=陰の間は動いている虫=陽が、季節が夏=陽になると動かない植物=陰になるという、陰陽の転変を体現しているものとして神秘的な薬効が期待されたわけです。
こうしたplant warmは世界で350種、日本でも250種ほど確認されているそうです。日本ではニイニイゼミに寄生するセミダケがよく採取されますが、薬にはなりません。

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薬効のある、いわゆる冬虫夏草は中国の四川省や雲南省などの3000メートル級の高原地帯に産するものです。これはバッカク菌類がコウモリガ科の幼虫に寄生して生じたものです。コウモリガは地中で4年かけて蛾の成虫になりますが、その3年目くらいの幼虫に、夏に菌が寄生して成長を始めます。冬になると硬化した幼虫の頭部から菌子体が伸びて、春に地上から4センチほどの棍棒状のキノコが顔を出します。
そのまま成長を続ければやがて胞子を飛ばし次ぎの世代がまた幼虫に寄生するわけです。その頃には虫体は腐って消えてしまいますから、初夏の雪どけのとき、キノコが顔を出したとき、まだ虫の体が生きているような形を保っているときに採取します。

このように大陸奥地で産出される特殊なものですから、本草書の記載も18世紀になってからとかなり新しい生薬です。世界で脚光を浴びるようになったのは、ごく最近1993年の世界陸上で、中国の馬軍団と呼ばれた選手たちが大活躍し、そのスタミナ源が冬虫夏草入りの薬膳料理だと紹介されてからです。

漢方的には腎の陽虚を補う滋養強壮剤として、不老不死の妙薬として珍重され、最近では抗ガン作用もあるとか喧伝されていますが、上記のように採取するのも大変ですから本物はたいへん高価です。入手できたら、病気の方は粉末にしたり、煎じたりして服用します。健康増進には焼酎に漬けて冬虫夏草酒、鶏肉や鴨肉のスープにいれた薬膳料理などがあります。

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