「びんつけ油」のにおい
おなじみのスパイス。インドネシア、モルッカ諸島原産のフトモモ科の常緑喬木チョウジの果実や花の蕾を使う。幹の材質は重く硬く、造船や橋梁につかわれていたという。
重いといえばやはり南方系の沈香、水に沈むほど重いから沈水木という名のある香木があります。春に散歩していると振り向いてしまうほど強い香りのジンチョウゲは沈丁花と書きますが、沈香と丁子の両方の香りがするからだそうです。
丁子は古代からヨーロッパにも中国にも伝わっており、スパイス、薬としてつかわれてきましたが、十八世紀にはインドシナからアフリカに移植され、現在の主産地は東アフリカだそうです。
紀元前には、すでに中国でその果実が使われており、その形が鶏の舌に似ているところから鶏舌香と呼ばれていましたが、宮廷の貴族は皇帝に拝謁するときはこの鶏舌香を口に含んでいました。口臭をとるためです。殺菌消毒の作用もあるため虫歯にもよく、現在でも中国にはくちゃくちゃ噛む習慣があります。
特に女性の子宮の働きを活発にする
現在スパイスや薬につかわれるのは花の蕾。小さな釘にそっくりな蕾は漢字で形を表現して丁子、英語のクローブもフランス語の釘(クルー)から。西洋ではまず肉料理やスープに、ローストビーフなどつくるときは肉の塊に釘を刺すようにぶつぶつ刺して香りをつけます。殺菌、防腐の作用もあります。香りがほろ苦く甘味もあるので焼きリンゴやプディングなどのデザートにもよくつかわれます。
アロマテラピーでは温かく甘いそしてすーっとする感じのする香りを嗅いだり、丁子油(クローブアロマオイル)をからだにすりこんだりします。消化管の働きを促進し、特に女性の子宮の働きを活発にするので、生理痛や出産前につかったりします。
日本でもその香りは好まれ、女性がつかっていた「びんつけ油」のにおいは、この丁子の香りで、現在でも石鹸や整髪料に配合されてますし、前述のように口臭を防ぎますから、チュウインガムや歯磨きに配合されてます。口中清涼剤の仁丹の特有の香りは丁子の香りです。
漢方では温裏去寒剤という分類をされますが、体の裏(中)を温めて冷えを去るという意味です。冷えて働きの弱った胃腸を温めて働きを活発にします。げっぷやしゃっくりにこのシリーズすでに登場の柿の蒂、シテイと組んで、丁香柿蒂湯という方剤があります。嘔吐や消化不良には他の消化剤と組んで処方されます。