78.酢(苦酒・ビネガー・木酢・竹酢)—殺菌作用と食欲増進—

酸味は肝と関係が深い

酢は、酢(醋)酸を4~5%くらい含んだ酸っぱい溶液ですが、私たちが体験できるのは、漬物の古漬。発酵食品が古くなり発酵がすすみすぎると酢っぱくなる。酸敗するといいます。そのへんまでは食べられますが、それをこすともう捨てた方がよい。牛乳の酸敗がすすんだヨーグルトの酸味(乳酸)もその程度まで。私は以前お米を発酵させてドブロクを作ったことがありますが、これもアルコールの段階をすぎて酸っぱくなってしまいました。

最近は自然食の時代で醸造酢を皆さん使いますが、これは、ドブロクと同じように米などを発酵させ、アルコールの度数が5%くらいになったときに、更に酢酸菌を使ってもう一段発酵をすすめて酢にします。以上でもわかるように、酢、酸、それから酢を醋と書くときもありますが、これらは皆「すっぱい溶液」を表す漢字です。同じように果実からの発酵酒を一段すすめて酢にしたものがビネガー。

酢のつくり方はもうひとつ。待合室に置いてある竹酢もそうですが、木や竹で炭を焼くとき、ベターっと重いタールの上に出てくる液体、これがやはり酢酸を含んだ酢です。現在はこの木酢や竹酢を防臭剤や浴剤として使いますが、以前はこれらから工業的に酢酸をつくっていました。以上は「自然」なつくり方ですが、現在では石油からの合成酢酸が主流で、この酢酸を4~5%含んだ溶液に香味料などを加えたのが食用の合成酢です。

効能は酢酸による殺菌作用

酢は中国では古く紀元前10世紀くらいには利用されていたようで、放置した酒が酸敗したものが起源らしく、「苦酒」と呼ばれていました。日本には起元500年頃輸入されたようで「からざけ(唐酒)」と呼ばれたようです。
ヨーロッパではもっと古く、紀元前50世紀にはバビロニアでワインビネガーをつくっていたようです。

酢の効能は酢酸による殺菌作用。酢洗い、酢じめ(鮨)、酢づけ(ピックルズ)など御存知の通り。
酸味は胃酸の働きを助け食欲増進にもなります。食物中の雑菌を殺しますから、夏には酢の物がいちばん。妊婦が酸っぱいものを欲しがるのもよく知られた事実です。漢方的には酸味は肝と関係が深く、ストレスを和らげてくれます。漢方薬としては、卵の殻の中で、生薬と酢を煎じる、という手の込んだ半夏苦酒湯などが知られています。